Our World in Dataが公開する「国別天然ガス生産量(一次エネルギー換算)」データから、対象期間1900年〜2025年・上位30か国分の年次推移を収録しています。米国とロシアの2か国で上位30か国合計の4割強を占め、シェールガスで生産を倍増させた米国、ピークを過ぎたロシア、北海ガス田の盛衰をそのまま線として残す英国が同じチャートに並びます。値はTWh単位。集計値(地域別・所得階層別)は除外しています。
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チャートの操作方法
「再生 / 一時停止」で年次アニメーションを開始・停止、年スライダーで任意の年へ移動、速度セレクタ(0.5×/1×/2×)で再生速度を変更できます。各年は上位12件を表示し、収録データは最新年の上位30件です。
このランキングについて
本ランキングは、国別の天然ガス生産量(一次エネルギー換算・TWh)を1900年から年次で収録したものです。収録対象は最新年の生産量上位30か国。石炭や石油と違い、天然ガスはパイプラインやLNG船といった輸送手段が整うまで商業的な価値が乏しかったため、1900年時点で値がゼロでない国は米国(73.84TWh)の1か国しかありません。チャートの左端がほぼ空白から始まるのはデータの欠落ではなく、この産業そのものが20世紀の産物であることを示しています。
このチャートの見どころ。1985年に旧ソ連の5か国がいっせいに現れる瞬間と、2005年に底を打った米国の線がそこから右肩上がりに倍増していく区間の2か所です。単位が体積(m³)ではなく熱量(TWh)である点には注意してください。各国政府が発表する「生産量○○億m³」とは基準が異なり、ガスの組成によって同じ体積でも熱量は変わります。順位を各国統計と突き合わせるときは、まず単位をそろえる必要があります。
データから読み取れる傾向
2025年の首位は米国の10,737TWhで、値のある30か国の合計39,420TWhの27.2%を1国で占める。2位ロシア(6,094TWh)を加えると2か国で42.7%になる。3位イラン(2,648TWh)と4位中国(2,641TWh)はほぼ横並びで、5位カナダ(2,062TWh)、6位カタール(1,835TWh)と続く。首位1国が過半を握る石炭(中国が上位30か国合計の52.7%)と比べると、天然ガスは頂点が2つに分かれた構造だといえる。
1900年から1980年代前半まで、この表の首位は一貫して米国である。1950年に1,928TWh、1970年に5,715TWhと伸び、2位以下を大きく引き離していた。ただしこれを「当時の米国が世界の天然ガスを独占していた」と読むのは正確ではない。旧ソ連圏の生産がこの系列に現れるのは1985年からで、それ以前の期間には該当する線が1本も引かれていないからだ。空白は「生産がなかった」ではなく「この区切り方では見えない」を意味する。
その1985年に、収録国数は25か国から30か国へ一段上がる。ロシア・トルクメニスタン・ウズベキスタン・カザフスタン・アゼルバイジャンの5か国が同時に登場し、ロシアはいきなり4,249TWhの2位に着地する。ゼロから立ち上がったのではなく、それまで1つの国として集計されていたものが分割されて見えるようになっただけである。1984年と1985年のあいだの段差は、生産の変化ではなく統計の区切りの変化だと理解しておきたい。
米国の線は2005年に4,894TWhまで下がり、順位もロシアに次ぐ2位に落ちている。そこから2010年5,752TWh、2015年7,403TWh(首位に復帰)、2025年10,737TWhと、20年で2.19倍になった。編集部で年次を送りながら見ていて最も目を引いたのはこの区間で、他のどの国の線もこれほど急には立ち上がっていない。シェールガスの採掘が本格化した時期と、線の折れ曲がりが正確に重なっている。
英国は、この表で「上がって下がる」全過程が最もはっきり見える国である。1970年に109TWh(4位)だった生産は北海ガス田の開発で2000年に1,135TWh(4位)のピークに達し、2025年は299TWhでピークの26%、順位は25位まで落ちた。石炭のランキングでは同じ英国が上位30か国に残れず表から消えてしまうのに対し、天然ガスでは30位以内に踏みとどまっているため、隆盛と衰退が1本の線としてつながったまま残っている。
上げ幅で目立つのはカタールで、1990年の65TWh(24位)から2025年の1,835TWh(6位)へ28倍になった。中国は154TWhから2,641TWhへ(18位から4位へ)、イランは247TWhから2,648TWhへ伸びている。イスラエルは2000年が0、2010年で31TWh、2025年は259TWh(28位)である。一方で2025年の値がピークを下回る国も多い。トリニダード・トバゴはピークの59%、エジプトは60%、ウズベキスタン・メキシコ・インドはいずれも66%。ロシアも2021年の7,021TWhが最大で、2025年はその87%の水準にある。
収録国数は1900年から1984年までが25か国、1985年以降は30か国で、2025年は30か国すべてに値がある。石炭のランキングのように右端で線が途切れる国がないため、直近年の比較はそのまま読んで差し支えない。年次を送るときは、線の本数が変わる1985年だけを例外として扱えばよい。
雑学クイズ
天然ガスはもともと無臭なのに、なぜ漏れると気づけるのか?
採掘されたままの天然ガスはほぼ無臭で、事業者が出荷前にメルカプタン(硫黄化合物)を微量混ぜて「腐った卵のような臭い」を付けている。きっかけは1937年3月18日に米テキサス州ニューロンドンの学校で起きたガス爆発で、無臭の残ガスが床下にたまっていたことに誰も気づけず約300人が亡くなった。事故後、テキサス州が付臭を義務づける法律を全米で最初に制定し、同年中に他州や連邦の規制も続いた。(出典)
「随伴ガス」とは何で、なぜ燃やして捨てられてきたのか?
石油を採掘すると副産物として出てくる天然ガスを随伴ガスという。輸送手段のない油田では商品にならないため、安全上の理由もあって現場で燃やす(フレアリング)処理が約160年にわたり慣行として続いてきた。世界銀行は2015年4月に「Zero Routine Flaring by 2030」を立ち上げ、35の政府が2030年までの常態的フレアリング廃止に賛同した。賛同国だけで世界のフレアリング量の約6割を占める。(出典)
パイプラインの届かない国へガスを運べるようになったのはいつからか?
世界初の商業LNG(液化天然ガス)輸送は1964年10月12日、アルジェリアのアルズーで積み込んだ貨物を専用船メタン・プリンセス号が英国のカンベイ島へ届けたものだった。同船は世界初の専用LNG船として1963年に進水し、姉妹船メタン・プログレス号とともに15年間の輸入契約を支えた。ガスをおよそマイナス162度まで冷やして液体にすると体積が大きく縮み、船で運べるようになる。(出典)
あわせて読みたい
- 世界の石油生産量の推移 — 随伴ガスの供給元でもある石油の生産地図。
- 世界の石炭生産量の推移 — 同じ化石燃料でも上位の集中の仕方がまったく違う。
- 国別一次エネルギー消費量の推移 — 生産ではなく消費側から見たエネルギーの重心。
- 国別1人当たりCO2排出量の推移 — 燃料構成の変化が排出に与える影響。
出典: Our World in Data「Gas production by country」, CC BY 4.0。